水墨画家・雪舟も描いた勇壮な「沈堕の滝」
■雄滝と雌滝からなる名瀑
「沈堕の滝」は、豊後大野市の大野町の大野川本流にある「雄滝」と大野川の支流である平井川にある「雌滝」の2つの滝によって構成されており、「おおいた豊後大野ジオパーク」のジオサイトの一つで、国登録記念物にも指定されている名瀑です。
雄滝は幅が97m、高さが17m、雌滝は幅4m、高さが18m。この本流と支流のぶつかりによって滝は生まれました。
この勇壮な姿を見た室町時代の水墨画家・雪舟(せっしゅう)は今から600年ほど前の1476年に滝を訪れ「鎮田瀑図」を描きました。この絵画は残念ながら関東大震災で焼失してしまいましたが、狩野常信による複製の絵画が残っているそうです。その絵画が展望スポットの案内看板などに描かれていますのでぜひチェックしてみてください。また江戸時代の地誌「豊後国志」には「垂直分かれて十三条をなす」とも表され、地元の方からは「豊後のナイアガラ」として親しまれています。
「沈堕の滝」は「おおいた豊後大野ジオパーク」のジオサイトの一つと前述しましたが、こちらを少し詳しくご紹介すると、
今からおよそ9万年前に起きた阿蘇火山の大噴火により、大野川流域は火砕流に埋め尽くされたと言われています。この巨大噴火の影響によって、市内には至る所に地球科学的な価値を持つ遺産が残っており、これらを「おおいた豊後大野ジオパーク」と呼んでいます。ジオパークはユネスコが推し進めているプログラムで、豊後大野市もその特異な景観からジオパークに認定されているんですよ。
そのうちの一つである「沈堕の滝」も、阿蘇溶結凝灰岩と呼ばれる火砕流が冷えて固まった岩によって形成されています。この縦に地質が破れている「柱状節理」をみることができるのも「おおいた豊後大野ジオパーク」の特徴です。
■廃墟となった旧発電所も!
雄滝の後ろをよーく見てみてみると、滝が二段になっているようにも見えますよね!
実は滝の後ろはダムになっているのです。
沈堕ダムは沈堕発電所の取水堰として1909年に電気鉄道会社によって建設されました。大分〜別府間を走る電車の動力源となり、近代化に一役買っていたそうです。
この発電所の建設に続いて、取水用に堤防が造られました。これが上段に見えている部分。この上段より奥はダムとなっています。
このダムによって、滝は大きな影響を受けました。滝の地盤である阿蘇溶結凝灰岩は縦の衝撃に弱い地質であるため、大規模な出水の度に耐えきれず、崩壊を繰り返してきました。そうして長い年月をかけ上流へと滝が徐々に移動してきたという、稀有な歴史を持っています。1996年に九州電力が滝壺付近の岩盤などの補強工事を行い、現在の姿を保てるようになりました。
1923年には3km下流に新しい発電所が建設され、明治に造られた石造の沈堕発電所は現在外壁だけの姿を残すのみとなっています。石造りのアーチなど美しき姿を想像させる遺構は、近代化遺産にも登録されています。
滝の近くには「ちんだの滝ふれあい公園」が造られており、水力発電の展示をみることができるほか、そこから階段を降りると散策路が整備され、旧発電所の遺構や雄滝を間近でみることができるようになっています。
雌滝と雄滝両方を眺めるなら県道26号線沿いにある展望台からがおすすめです。
この展望所の近くには「岡藩滝落としの刑場跡」という恐ろしい場所も・・・!
岡藩では容疑者が罪を犯したかどうかを判断できかねるような場合に、被告人を滝壺へと落とし、無事に助かれば無罪放免とする刑もあったのだとか・・・。
勇気がある方は近くまで訪れて、その怖さを体験してみてください。
■沈堕の滝
所:豊後大野市大野町矢田
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